(社福)川本福祉会 養護老人ホーム 江川荘

江川荘 全景江の川沿いにある江川荘、平成15年4月に新築移転された。玄関を入ると広いロビーに続く広く明るい廊下、手押し車を押して歩く入所者の方が、元気に挨拶してくれた。

養護老人ホーム 江川荘は、50床の居室とデイサービスを行っている。 川本町の人口は約3800人、島根県は高齢化率全国1位を獲得してきたが、最近のニュースでは、このたびの調査で第2位になったと聞いた。しかし、高齢化率が高いことは、周知の事実、川本町もどんどん高齢化が進んでいる。

社会福祉法人川本福祉会は昭和49年に設立され、さまざまな老人福祉事業と保育所などの子育て支援事業を展開している。 50床の居室は満室、現在71歳から104歳までのご老人が、自分でできることは自分でと、自立しながら元気に暮らしている。

50人のうち、女性は38名、男性12名、クラブ活動など楽しみながら、また、多くのボランテイアさんに支えられながら、地域に根ざした「江川荘」として、職員一同がんばっている。

生活相談員 非々篤史(ひひ あつし)さん

生活相談員 非々篤史さん昭和49年3月1日生まれの37歳、穏やかで明るい人、非々さん あまり聞いたことのない苗字、地元因原の信楽寺(しんぎょうじ)の長男だ。江川荘のすぐそばの山手に大きな寺の本堂の屋根が見える。地元でも非々さんという姓の家は1軒だけとのことだ。

寺の跡継ぎとして、龍谷大学を卒業し帰郷したのち川本福祉会に就職した。事務職として3年、デイサービス職員を経て、現在の生活相談員となって4年、通算11年目となった。

事務職から現場へ、戸惑いはなかったのかと聞くと、お年寄りさんたちとのお付き合いは、とても自然に入っていけたという。確かに寺には、いつもお年寄りさんたちが立ち寄り、お話していく場所でもある。子どものころから、そんな生活環境の中で育った人だった。

 

マンネリ行事を見直す

生活相談員として行事を企画している非々さん、毎年同じ行事を続けていることに疑問を持った。同じことを繰り返すことは簡単だ。しかし、これは職員の都合の良い行事になっているのではないか。「なんとかしたい」思いが募っていった。

昨年、江川荘で文化祭を開催した。入所者は園芸・クッキング・習字やカラオケとクラブ活動にできる範囲で参加している。その発表会もかねて、家族参加の文化祭を企画した。クラブ活動での写真を添えて、入所者本人から家族への招待状も出した。

入所者さんは、クラブごとに集まって、文化祭でどんなことを発表しようか相談して、活動内容を決めた。例えば、園芸クラブでは、大根とサツマイモの販売をすることになり、一生懸命野菜を育てた。
カラオケクラブでは、みんなで合唱することなり、練習が始まった。

入所者さんそれぞれに、自分が何かの役に立っている。そんな実感を得たことに違いない。そして、お互いを評価しあい、「みんなでがんばっている」と文化祭は盛り上がっていった。

入所者さんたちは、長期にわたる方が多く、家族とのつながりは薄い方が多い。手作りの招待状の成果もあって、当日9組のご家族があつまってくださった。非々さんはそれがとてもうれしかった。

文化祭は、マンネリ化を見直そうとした非々さんの、一つの試みであった。

 

これからも・・・・・

この次は、どうしますか?

『皆さん一人ひとりの望みをかなえてあげたい。自発的な言葉を引きだし、拾っていきたいです。』

それって、一番難しくないですか。?

『そうですね。本音を引き出すには、信頼関係が一番なんです。』

非々さんたち職員さんは、声がけをして、毎日地道な努力をしている。

最近の活動を紹介しよう。

『先日、希望者を募って、5人の方と一緒に「ポップサーカス」を見に松江市に行ってきました。帰ってきても、興奮冷めやらず、皆さん喜んでくれました。

お一人ごとに、実家へ連れて行ったり、お買い物に付き合ったりしています。ものすごい満足度ですよ。

なかなか、大変なことですが、職員さんたちは入所者さん一人ひとりの言葉を拾い集めて、きめ細かい行事を企画している。 まだまだですよと、非々さんはいう。 一月に1回でもできたらいいですよねと、うれしそうな笑顔だった。


第1回AJCCで金メダル受賞

AJCC(オール・ジャパン・ケア・コンテスト)で受賞職員さんたちも、毎日のお仕事に忙しい中、研修に励んでいる。2010年11月、出雲市でAJCC(オール・ジャパン・ケア・コンテスト)第1回目が開催された。 3名の職員が 排泄部門・入浴部門・認知症部門に参加し、その中で認知症部門において、主任介護員松下あゆみさんが、みごと、金メダルを受賞した。

毎日の仕事におわれ、改めて原点を見直すいい機会だったと話してくれた。 非々さんの、マンネリ化を見直すという試みは、行事だけに留まらず、職員さんの仕事にも、見直すチャンスになったようだ。

入所者さんに寄り添ったケアーを目指す非々さんの、今後の活動に期待したい。

 

 

 

 

 

皆さんの作品がズラリ
施設の廊下には皆さんの作品がズラリ!

お花クラブ
お花クラブ

習字クラブ
習字クラブ

『よもぎもち』を作りました。
クッキングクラブでは『よもぎもち』を作りました。

「ポップサーカス」
希望者を募って、5人の方と一緒に「ポップサーカス」(松江市)へ行きました。

『さつまいも』 大豊作!
園芸クラブのみなさん。一生懸命育てた『さつまいも』 大豊作!

一時帰宅とお墓参り
入所者の皆さんの希望による一時帰宅とお墓参り

川本町探検地図及び入所者出身地案内
入所者の皆さんと一緒に作った川本町探検地図及び入所者出身地案内

2011年7月13日取材 ティーエム21・宮崎 峰子