放泉会 『SSBさわらびシンフォニックバンド』
総勢31人のシンフォニックバンド、お仕事を終えたあとの午後7時から2時間、バンド練習にはげむスタッフの皆さんの様子を紹介します。
さわらび
大田市長久町、大田ジャスコと9号線と線路をまたいで向かい側に、ゆうイングさわらびがある。「さわらび シンフォニックバンド(通称SSB)」が練習している。
ドアをあけると、管楽器の音が聞こえてきた。普段は、デイサービスルームとなっている2階で、Tシャツ・ジャージのお仕事姿のままで、パート練習に励んでた。
午後7時、これから2時間合同練習をするのだ。月に2回、忙しいお仕事の合間、貴重な合同練習日だ。メンバーは31人、この日は24人ほどの人達が集まっていた。譜面台には「どらえもん」の楽譜が立ててあった。
昭和59年8月設立された社会福祉法人放泉会が、翌年特別養護老人ホームを立ち上げ、その施設名が「さわらび苑」。
さわらびとは、早春に芽吹いた『わらび』の事、春の息吹でご利用者に活力と元気を取り戻し、再び家庭や社会への復帰を願ってつけたという。
社会福祉法人放泉会は、三瓶町池田の『さわらび苑』のほか、デイサービスセンター、グループホームそして長久町の『ゆうイングさわらび』、学童クラブ、保育園も経営している。放泉会の職員総数は約200人弱が在籍し、SSBに所属するのは、各施設から集まった人達、楽器の経験者もいるが、ほとんどは初めて楽器に触れる人達だった。
松本大介さん33才
熱心に練習しているなか、コンダクターの瓜坂尚之さんに、お話を聞きたいと紹介していただいたのが、松本大介さん。このとき、チューバを懸命に吹いていた。
松本大介さん大田市出身の33才、楽器経験はなし。
3~4年前のこと、施設のクリスマス会で、バンド演奏をやろうという事になり、5~6人で発表会をやった。楽器経験なし、もちろん自身もなし、しかしさそわれて練習をはじめた。クリスマス会での発表がとても楽しかった。
その後、理事長さんが、放泉会職員でバンドを作ろうという事で、SSBが結成された。2008年の事だった。SSBに参加した松本さん、同じやるなら大きな楽器がイイ、チューバを選んだ。
日々は個人練習、月2回の合同練習、今では放泉会の施設だけでなく、他の福祉施設・保育園・地域のイベントなど、出演依頼があり、ボランテイア活動をするようになった。
譜面台の「どらえもん」は、ゆうイングさわらびと保育園合同の夏祭りのための練習だった。
松本大介さんのお仕事
三瓶町池田にある『デイサービスさんべ』で働いている。ここは、古い民家を改装し、利用者の皆さんが、自宅でくつろいでいるような、語らいを生み出すふれあい広場を目指している。
高校生のとき、やりたい事が見つからない日々の中「なにか人のためになる事がやりたい」と、福祉専門学校に進学した。
匹見町社会福祉協議会の施設で、働き始めたころ、お年寄りさんたちへの接し方がわからなかった。初めての社会人、初めての一人暮らし、不安も大きかった。
日々の仕事の中で、利用者さんたちとかかわる中で、お年寄りさんたちから教わる事が多かった。
あるとき、利用者さんが入院された。大田の実家に帰省途中、病院へお見舞いに寄った。思っていたより病状は深刻で、体中に点滴やチューブ、驚いた。
お世話をしていた娘さんに、見舞いに寄った自分のことを、いつもお世話になっていると、丁寧に紹介してくれた。
どんなに辛い病状だっただろうと思うに、その心遣いと気遣いがうれしく、またありがたかった。
帰りの車の中、涙が流れた。「自分は何も出来ていない」 そんな思いが強くなった。
「15年介護の仕事に携わって、いつも皆さんにかける言葉は何ですか」
「昨日より、足の具合がよさそうだね。 今日は、手が良くあがるね。 練習してきたね。 がんばったね。 毎朝、なにかほめるところを探して、声がけをするんです。」
これでいいと立ち止まらず、前を向いていきたい。力強い言葉だった。
さわらびシンフォニックバンド
放泉会はたくさんの施設と職員がいる。日々のお仕事では、顔を合わせることは少なく、話すこともなかった。このバンドに参加して、みなさんとのコミュニケーションがとても楽しいと、松本さんは話した。
保育園での演奏は、子供たちの笑顔が忘れられない。楽器に触らせてあげたらとっても喜んでくれた。こんな体験をもっとさせてあげたいなあ。バンドメンバーみんなの思いだろう。
コンダクター瓜坂尚之さんは、桐朋音大で学び、トロンボーン奏者として活動していた。介護保険法施行の時、放泉会運営に携わることを決意し、広島の福祉施設で3年の修業の後、大田市に帰ってきた。
忙しい仕事の合間、バンドの指導者として、また高校ブラスバンド部の指導もしている。大田市の音楽教育にとって貴重な存在なのであろう。
トランペットなどの管楽器、クラリネットなどの木管楽器、ドラムなどの打楽器、充実している。それぞれの楽器は、個人で管理し自宅や仕事の合間に、パート練習をする。
楽器は、毎日5分でも10分でも、触れて演奏する事が大切、そしてメンテナンスもね。
放泉会の創立25周年記念式典が4月25日に開催された。SSBの団員の皆さん、必死になって休日返上で練習し、発表会に臨んだ。「篤姫」「演歌メドレー」「明日があるさ」「星条旗よ永遠なれ」 大きな拍手をいただいた。
真っ赤なジャケットに蝶ネクタイという衣装も新調してもらい、大きな舞台での演奏を終えて、ほっとするまもなく、松江市で行われる老人福祉施設協議会中国大会での演奏依頼をいただき、練習に励んでいる。
取材の最後に演歌メドレーのなかの「川の流れのように」を演奏してもらった。
皆さんの一生懸命さと暖かさが伝わるとても素敵な演奏でした。 ありがとうございました。
社会福祉法人 放泉会 事務局
〒694-0223 島根県大田市三瓶町池田2661番地3
TEL (0854)83-2345 FAX (0854)83-2349
公式サイト http://sawarabi.info/
2010年6月25日(金) 取材 ティーエム21・宮崎 峰子
チューバを担当する松本大介さん
熱心な練習風景
各楽器を担当する皆さん
熱心な練習風景
コンダクター 瓜坂尚之さん
放泉会 創立25周年記念式典での演奏
SSB さわらびシンフォニックバンド 演奏発表