特別養護老人ホーム やすぎの郷 「絵葉書で心の架け橋」
特別養護老人ホーム やすぎの郷
特別養護老人ホーム やすぎの郷
平成12年3月設立された「やすぎの郷」。安来第一病院に隣接する敷地に、やすぎの郷ほか、社会福祉法人せんだん会の各施設が並んでいる。
やすぎの郷は入所者60人、ショートステイ10人。入所者さんは、女性54人・男性6人で、70歳から104歳の方までが、在籍している。
まだあたらしい施設の玄関を入ると、扉の向こうは広いロビーが真ん中にあり、その周りに居室・事務所などが取り囲んでいる。中庭のようなロビーは、食堂であり機能回復訓練場であり、談話室でもある。開放的で明るいホールでは、午後のひと時をそれぞれの過ごし方でくつろぐ、利用者さんの様子が見えた。
新聞を読む人、TVを見る人、職員さんに手をさすられながらお話をしている人、静かでゆったりした時間が流れていた。
「やすぎの郷だより」のファイルを前に、左から塩野巧さん、高田一秀さん、根来川悠希さん
介護主任・介護支援専門員 塩野 巧さん
やすぎの郷の職員の仕事の流れを聞いた。
職員は早番・遅番・宿直と色々なパターンがあるが、おおむね仕事の流れはこうだ。
- 7:00 入所者さんの朝ごはんの介助をする
- 8:30 職員のミーテイング(宿直からの申し送りなどがある)
- 午前中は シーツ交換やお風呂の介助、テイータイム、体操など
- 12:00 昼食介助
- 午後は午前と同様にレクレーションなどがある、また ボランテイアさんのよる 習字・カラオケ・手芸などのレクレーションプログラムなどが組まれている
利用者の皆さんが家庭的で、快適な生活が送れるように、個人のニーズにそったサービスの提供に努めている。
介護士 高田一秀さん
やすぎの郷で介護士として5年目、出身は地元、歩いて3分の自宅で家族とともに暮らしている。
5年介護士として働いて、一番うれしいことを聞いてみた
仕事として当たり前のことをしているが、利用者さんの「ありがとう」の言葉が一番の励みだと話してくれた。
なかなか、利用者さんとの信頼関係を作ることは難しいが、自分の気持ちをしっかり伝え続けることで、わかってもらえます。
「ありがとう」の言葉は、そこから生まれてくるようだ。
介護福祉士 根来川 悠希さん
高校生のとき、ボランテイアで施設へいった経験が、今の仕事に就くきっかけだった。
「絵はがきで心の架け橋つくり」ということについて、聞いてみた。
- 2000年から「やすぎの郷だより」というチラシを年4回発行している。
- 最初は、行事の様子や新人職員の紹介が主体の手作りだった。
- 3年前から、ご家族様へ一言メッセージを書く欄を設けて、スタッフ手書きメッセージを書き込んで送った。
- 2009年より、もっと喜んでもらえるお便り作りはできないか、手作り絵葉書を添える取り組みを始めた。
2010年10月、絵葉書・お便りをご家族や利用者さんが、どう感じていらっしゃるかアンケート調査をした。見せてもらったたくさんのアンケートには、様子が良くわかってありがとうの言葉がつづられていた。
ひとつひとつ丁寧な手書きによる絵はがき
絵はがきの取り組み
絵葉書の取り組みには、もちろん消極的な職員もいた。たしかに、絵を描くことも文章も、苦手な人もいる。
そこで色々話し合い、季節の言葉の見本、絵のお手本やコピーできる作品などを用意し、できるだけ作りやすい工夫を考えた。
また、出来上がった絵はがきをコピーしファイルすることで、誰でも見ることができ、参考にもなった。
さまざまな工夫の結果、この取り組みは現在も継続している。
スタッフは、定期的にご家族に様子を伝えることができ、個別のかかわりも増え、良い取り組みと感じている様子だ。
利用者さんの良いところを見出し、ちょっとした変化の様子などをお知らせして、スッタフとの信頼関係を築き「心の架け橋」となるように、心をこめて書いている。
最後に
毎日の仕事に終われる中、皆さんの息抜きは何ですか?
- 根来川さんは、楽器演奏(ホルン演奏)が趣味、やすぎの郷で友人とともにコンサートも行なっているそうだ。
- 高田さんはランニング、中海マラソンに出場し走っている。皆からはランナー高田と呼ばれている。
- 塩野さんは、さあーね。子どもと一緒にあそぶことかなあ。
皆さん、小さいころから、おじいちゃん・おばあちゃんと一緒に育ったことから、介護の仕事につくきっかけとなった、と話してくれた。
最後に、今後どんな取り組みをしていきたいか聞いてみた。
塩野さんは「ふるさとビデオ」の話をしてくれた。
普段外出できない入所さんたちに、ふるさとの様子を見てもらいたいと、職員がビデオカメラを手に出かけて撮影した「ふるさとビデオ」。
喜んでくれました。
あまりしゃべらない方も、言葉が出た。うれしいですね。
自分らしい取り組みを考えていきたいです。
職員の皆さん(奥左から)塩野巧さん、高田一秀さん、根来川悠希さん
手作りの『やすぎの郷だより』(ご長寿者御祝い)
入所者の皆さんによる作品
やすぎの郷祭り 職員スタッフの皆様による余興(よさこい節)
やすぎの郷の名物ランナー高田さん(ふるさとビデオ画面を撮影)
趣味のホルン演奏をする根来川さん(左から2番目)
職員で制作したふるさとビデオを鑑賞する入所者の皆さん
手作りの『やすぎの郷だより』(夏号)
2011年7月25日取材 ティーエム21 宮崎峰子