城谷晴美さん栄養士をめざしたきっかけ

栄養士 城谷晴美さん昭和56年生まれの城谷さん、明るい笑顔で迎えてくれた。
この日は、翌日に開催される、施設の文化祭にむけて、野菜コロッケをつくるため、施設入居者やスタッフ皆さんで、ジャガイモやたまねぎ人参の皮むきをしていた。

このあと、スタッフが野菜をきざんで、500個のコロッケを作る準備に入る。入居者の皆さんは、おしゃべりをしながら、楽しそうに皮むきを手伝っていた。

ケアハウス美川で栄養士として働く城谷さん、子供のころから偏食、特に人参・ピーマンなど、においの強い野菜が苦手だった。学校給食が苦手だった。いつまでも食べられなく、いやな思いしか残っていない。高校生のころ、バランスの悪い食事が原因で、体調を崩しがちだった城谷さん、食事の大切さを学び、実践することで体調は回復してきた。食事の組み合わせを考え、自分で調理もすることで、食事の大切さと同時に、楽しさを味わった。栄養士を目指そう・・・・・。

縁あって、美川の特養・美川苑に調理員として就職し、2年間働いた後、ケアハウス美川に移動になり、栄養士として7年目になる。

ケアハウス美川

ケアハウス美川(みかわ)ケアハウス(社会福祉法人 ケアハウス美川、浜田市内村町567)とは、お食事つきの高齢者向け住宅、外出や外泊などすべて、利用者が自由に過ごす施設だ。お部屋を見せてもらった。

フローリングの明るい1ルーム、エアコン・電磁調理器のついたミニキッチン・トイレなどが機能的に配置されている。お買いものや、食事の支度などが不自由になってきたなどの理由で、利用される方が多いようだ。

通院やお買い物などの送迎もあり、広い浴室はいつでも入れる。そして、ヘルパーステーションを併設しているので、介護保険を利用しての生活も出来る。ケアハウスは、入居者の方たちの自由度が高いので、それぞれの方たちの考え方もさまざまである。

食事は、入居者にとって最大の楽しみだ。一人ひとりに喜んでもらいたい、栄養士として、ケアハウス美川にきた城谷さんの大きな目標だった。

全国老施協研究会議で最優秀賞受賞

最優秀賞 表彰状ロビー奥に黒板があった。10月16日(土)の夕食のメニューがかいてある。
ウズラ卵のおすまし・レバーと野菜の炒め物・いもづるの煮物・春雨サラダ 以上4品このうち、いもづるや野菜は、施設の畑で収穫したものということだ。
一人ぐらしで4品作るのは、大変なことだ。作ったものがあまってしまい、毎日同じものを食べなくてはならない。

城谷さんはケアハウス美川に移った当初、いろいろ戸惑ったという。以前の特養では、施設入居者の食事は、すべて管理されている。一人ひとりの状況に応じて、食材のきり方ややわらかさ、味付けなど、栄養士の管理のもと提供されていた。
食事は管理するものと思っていたため、見えていない部分があった。

一人ひとりに喜んでもらいたい、取り組んでいた「個別対応」。
全体の声よりも、個々の声に耳を傾けたため、自分の意見を声に出す方とそうでない方と、対応に差が出ていた。自分の意見を言う方は、だんだんエスカレートし、要望にこたえることが困難となっていく。
結果、入居者からの不平や不満の声を聞くことが多くなった。
提供する食事と入居者の状態が合わなく、残菜も減らない状態となっていた。

栄養価が高く、見た目も美しく、個々の気持ちにそった、健康を支えられる食事、理想でした。

あるとき、入居者の方から「何も言わないのは、それなりに満足しているからだよ」そんな声をかけられた。肩の力が抜け、気が楽になった。
「食事は楽しくあってほしい」これが、目標となった。

「食事は楽しく、生き生きと、」

そして、平成21年12月、全国老人福祉施設研究会議〔鹿児島会議〕の第5分科会実践研究発表(ケアハウスの部)において、城谷さんは、これまでの栄養士としての目標と取り組み「食事は楽しく、生き生きと、」をテーマにした研究発表を行い、見事、最優秀賞を受賞した。

食事は楽しく生き生きと

高齢者の食事の人気メニューを聞いてみた。
寿司・てんぷら・刺身・麺類 そんな答えが返ってきた。あっれー外国人といっしょだ。

まあ、いつもそんなわけにはいきませんが、あたたかいものは温かく、冷たいものは冷たく、食事の基本ですね。というわけで、食堂には、冷蔵庫と温蔵庫は配置された。いつでも出来立ての温度で食事を楽しめるようになった。

自分が食べたいものを選択できるセルフ方式になった。量や食材の形態など、少量で小さめに刻んだもの、というふうに選べるようにした。

また、出来るだけ自分で出来ることは自分でする。配膳や配下膳など、テーブルの高さにあわせた配膳台を作るなど、高齢者が動きやすいように工夫を凝らしている。

こうした改善をすることで、残菜量も少しずつ減ってきた。
食事は楽しくあってほしいの目標は、少しずつ達成されているようだ。
城谷さんの栄養士としての知識と、入居者とのコミュニケーション、職員どおしの連携により、みんなが楽しめる食事作りは、すすめられていく。

今回、訪問してみんなでわきあいあい、ジャガイモの皮むきはそんな皆さんの想いの現われだったように思えた。

社会福祉法人 浜田福祉会 ケアハウス美川

〒697-1331  島根県浜田市内村町567番地
TEL (0855)27-5000 FAX (0855)27-5001
公式サイト http://www.mikawaen.com/

2010年10月16日取材 取材 ティーエム21・宮崎 峰子

 

平成22年8月 盆踊り会(ケアハウス美川ホールにて)

平成22年8月 盆踊り会(ケアハウス美川ホールにて)

全国老施協研究発表での最優秀賞授与式と表彰状(左は斎藤篤施設長)

全国老施協研究発表での最優秀賞授与式と表彰状(左は斎藤篤施設長)

10周年記念イベントを支える職員スタッフの皆さん

10周年記念イベントを支える職員スタッフの皆さん

10周年記念イベントのお食事会

10周年記念イベントのお食事会

10周年記念イベントでのおいしいお弁当

10周年記念イベントでのおいしいお弁当

日々の食事を支える城谷調理士と調理スタッフの皆さん

日々の食事を支える城谷調理士と調理スタッフの皆さん

入居者の皆さんでホールに集まりジャガイモ、人参、玉葱の皮むき作業

入居者の皆さんでホールに集まりジャガイモ、人参、玉葱の皮むき作業